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コラム

第5回

【シリーズ】建築と環境 -2-
「環境配慮型不動産」

イースター島の悲劇

前回のコラムでは、イースター島の悲劇についてふれました。モアイ像で知られる南太平洋の小さく豊かな島は、環境破壊によってあっという間に文明が崩壊してしまいました。環境破壊はジワジワと進行するため私たちは気づきにくく、そして気づいたときにはもう手遅れとなっていることが多いのです。

イースター島の悲劇は、私たちに多くの教訓を残してくれました。しかし、そうした教訓を無視するように、今またイースター島の悲劇と同様の、いや、それをはるかに超える規模の悲劇が繰り返されようとしているのです。

それは、遠くの小さな島の出来事ではなく、私たち人類が住む地球そのものなのです。

増え続ける人口

イースター島では、増え続けた人口により島の限りある資源を使い切ってしまい、文明の崩壊が起こりました。これは現在の地球にもまったく同じことがいえます。世界の人口は1日に約22万人、1年間で8,000万人のペースで増え続け、いまや地球上の人口は80億人に迫ります。(2023年3月時点の国連および米国勢調査局等による推計値)。

2050年頃に世界の人口は100億人を超え、既に地球の資源はこれだけの人口を支えきれないところまで来ているといわれます。イースター島の悲劇を地球規模で繰り返さないため、私たちが今できることはなんでしょうか。

環境配慮型不動産の必要性

その答えの一つが、環境配慮型不動産、いわゆるグリーンビル普及への取り組みです。昨今、自社ビルの建設やオフィスビルのテナント入居などに際し、建物の環境性能を重要視する企業が増えているといいます。

京都議定書では、日本は2012年までの5年間で、温室効果ガスの平均排出量を基準年(CO2の場合は1990年)から6パーセント削減することを約束し、その目標は達成されました(2016年3月に国連の審査完了)。じつは、この京都議定書の取組みの中で、建築物に関わるCO2排出量が意外と多いことがわかりました。たとえば、我が国のCO2排出量を部門別にみてみると、家庭部門(住宅)と業務その他部門(オフィスビル等)の合計が、排出量全体の約三分の一(15%+21%=36%)を占めていることがわかります。

近年、日本のエネルギー消費量は減少傾向にあるものの、世界的な課題である地球温暖化対策を進めていくためには、この家庭・業務部門をはじめとする各部門の更なる省エネの促進と、再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーの導入拡大が必要です。2020年10月には「2050年カーボンニュートラルの実現」、2021年4月には「2030年度に2013年度比で温室効果ガス46%削減、更に 50%の高みを目指して挑戦を続ける」とする新たな削減目標が示されました。また、2021年10月に閣議決定された第 6 次エネルギー基本計画では、2030年度の省エネルギー目標として6,200万kl程度(原油換算値)の削減を新たに掲げ、この目標の確実な実現に向けて取り組むことになっています。これは京都議定書のころと比較し、大幅にハードルを上げた目標設定といえるでしょう。

改正省エネ法

2050年のカーボンニュートラルの実現や、新たな温室効果ガス削減目標の達成に向けては、従来の省エネ政策に加えて、エネルギー需給構造の変化を踏まえた新たな取組が必要です。これら取組を加速させるとともに、安定的なエネルギー供給を確保するため2022年5月に改正省エネ法が成立し、法律名もこれまでの「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」から「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に、ビミョーに見直されています。

このような規制強化は日本国内だけの話ではなく、温室効果ガス排出量の多い先進各国でも、共通の課題となっています。また、ヒートアイランド現象やユニバーサルデザインなど施設利用者の快適性向上のために、建築物に要求される条件はますます高度化しており、こうしたこともグリーンビルが注目を集める要因となっているのです。

さらに、企業においてはCSR(Corporate Social Responsibility)の観点から、グリーンビルをオフィス賃貸の条件として設定し、あるいは自社ビルの環境配慮対策を進めることで、追加コストを支払ってでも、プレミアムを求める傾向が強まりつつあります。

このように、現在では建築に対する環境性能の要求は必須事項となっていますが、建物の性能評価はどのように行われているのでしょうか?

次回のコラムでは、建物の環境性能評価指標について、見ていきたいと思います。

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