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第38回

「AIと桃太郎(後編)」
~プロジェクト成功のための
戦略と現代的応用~

前編の振り返り

前回のコラムでは、「桃太郎」の物語を一つの建設プロジェクトに見立て、リーダーである桃太郎の資質をAIと共に分析しました。後編となる今回は、イヌ・サル・キジが仲間となった「チーム桃太郎」の戦略に焦点を当てます。

チーム力と勝つための戦略

建設プロジェクトが、設計、施工、設備、電気など多様な専門家の協力なしには成り立たないように、「チーム桃太郎」もまた、個々の強みを活かした連携が成功の鍵となります。まず、このチームの能力をAIにSWOT分析してもらいました 。

この分析から導き出された戦略は、現代の建設プロジェクトにも通じるものばかりです。

1.WBS(作業分解構成図)と適切な役割分担

・桃太郎:PM(プロジェクトマネージャー)として全体の指揮と士気向上を担う。

・イヌ:地上部隊として先行調査(鬼の追跡、拠点特定)を担当。

・サル:特殊工作班として障害物除去(罠の解除)や奇襲攻撃を仕掛ける。

・キジ:航空測量・偵察部隊として上空から現場全体の状況を把握し、情報を提供する。

2.現場調査(現地調査)と情報戦

AIによるWBS分析では、キジによる航空偵察で鬼ヶ島の地形を把握し、有利な作戦計画を立てる、とあります。これはまさに、現代の建設DXにおけるドローン測量とBIMの活用そのものです。

先日、私が関わったある工場建設のプロジェクトでは、複雑な地形に大型の施設を建設する計画で、各工種の干渉が大きな課題となっていました。そこで、ドローンで現場全体を3次元スキャンし、そのデータをBIMモデルに統合するという試みをしたのです。

すると、まるでキジが空から鬼ヶ島を見渡すように、設計段階では気づけなかった配管と構造体の干渉箇所がいくつも可視化されました。言わば、空を飛ぶキジ(ドローン)が、地上で働くイヌ(建築業者)と、機敏に動き回るサル(設備業者)の衝突を未然に防いでくれたのです。この「情報の統合と可視化」こそが、桃太郎の時代から現代に至るまで、プロジェクト成功の要諦と言えるでしょう。

対立から協業へ:
現代的な課題解決アプローチ

物語では鬼を退治して終わりますが、現代のプロジェクトでは、必ずしも「対立」が最善の解決策とは限りません。「力による対決ではなく、対話や協力を軸とした解決策はなかったのか?」という視点で、AIに別の戦略を提案してもらいました。

1.ヒアリングによる根本原因の究明

鬼がなぜ村を襲うのか、その背景(食料不足、誤解など)を徹底的にヒアリングします 。これは、施主が抱える潜在的な課題を掘り下げることに似ています。

2.Win-Winの関係構築

村人と鬼が共存できる方法、例えば鬼の腕力を見込んでインフラ整備の仕事を発注したり、物資交換制度を作ったりと、共通の利益を探ります。

3.チームのスキルを活かしたコンサルティング

イヌが信頼関係構築の窓口となり、サルが知恵を絞って鬼の生活改善(住環境改善など)を提案し、キジが上空から調査してデータを提供する。これはまさに、チーム桃太郎の組織的なコンサルティングです。

これは、発注者・受注者の関係を超えたパートナーシップや、周辺環境との共生が求められる現代の建設業界にとって、非常に示唆に富む内容です。

現代版「桃太郎」
in 建設業界 ~サイバー鬼退治の巻~

最後に、この桃太郎プロジェクトを現代の建設業界に置き換えた物語を、AIに創作してもらいました。

大手ゼネコンに勤務する若き現場監督MOMOTARO。彼が担当する大規模再開発プロジェクトのBIMデータが、ある日サイバー犯罪集団「鬼ヶ島ネット」によって暗号化され、プロジェクトが停止する危機に陥る。

正義感の強いMOMOTAROは、自らのITスキルを活かしてこのサイバー攻撃に立ち向かうことを決意。

さっそく社内外の凄腕たちに声をかけ、ホワイトハッカーのDOG、AI開発エンジニアのMONKEY、そしてドローン測量・警備担当のPHEASANTと共に、対策チーム「チームMMT」を結成する。

徹夜作業の差し入れ「エナジーバー(現代版きびだんご)」を片手に、「鬼ヶ島ネット」のサーバーに潜入。見事に悪質なプログラムを無力化し、重要なBIMデータを取り戻すことに成功する。

MOMOTAROたちの活躍により、プロジェクトは無事に再開。彼らはデジタル時代の建設現場を守るヒーローとして、感謝されながら日常の業務へと戻っていくのであった。

めでたし、めでたし。

桃太郎印の…

今回は2回にわたり、AIを使って昔話「桃太郎」を分析してみました。その結果見えてきたのは、「桃太郎」が子供向けの単なる勧善懲悪の物語ではなく、目的達成のための戦略、チームビルディング、ステークホルダーとの関係構築といった、現代のプロジェクトマネジメント、ひいては事業の価値創造に通じる普遍的なヒントに満ちていることでした。

これこそが「桃太郎印のブランディング戦略」ではないでしょうか。つまり、桃太郎の物語には、現代のマーケティングに通じる多くのヒントが隠されていたのです!

あとがき

今回のコラムでは、生成AIに様々な分析をしてもらいました。AIは膨大な情報をもとに多角的な視点を提供してくれますが、それはあくまで思考の補助線です。私たちの建設業界においても、AIを「思考を広げるツール」として活用することで、旧来の慣習にとらわれない、新しいプロジェクトの進め方が見つかるかもしれません。今後も、AIとの対話を通じて、新しい発見をすることが楽しみです。

そして、このコラムを支援してくださる皆様のプロジェクトが、桃太郎の物語のように未来永劫語り継がれる成功事例となる、その一助となれば、これに勝る喜びはありません。

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