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コラム

第18回

2023年度のまとめ(1)
「会計年度とBIM」

日本の会計年度

新しく年が明けるとよく聞こえてくるのが「年度末は忙しい!」というコトバです。でも、近頃では「ウチは12月が期末です。」とか「わが社は9月期決算です。」なんていう会話もよく聞かれます。ちょっと気になったので、国税庁の資料を調べてみたら、3月期決算の法人数は全体の約19%で、次に多いのが9月期決算の約11%、3番目が12月期決算の約10%という結果でした。(出展:国税庁ホームページ統計資料「決算期月別法人数」より
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin1997/11.htm)

あれ?この統計だと、年度末だから忙しいっていう人は、全体の2割もいないのでは?と思ったのですが、この資料を資本金別に見直してみると、資本金が1億円以上の会社では約54%が3月期決算となっており、資本金が100億円超の大会社の場合には、3月期決算の割合が約74%になることがわかりました。これは私たちが一般的にイメージしている「年度末は忙しい!」というイメージに近い数ですよね。

なんで日本は年度末が3月なのか

日本の会社で3月期決算が多いのは、国や地方公共団体などの公的機関の会計年度が4月~3月となっていることがその理由だと言われています。でも、なんで公的機関は3月期決算なのでしょう?これも気になったので、ちょっと調べてみました。

国の会計年度については、財政法という法律の第11条に「国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする」と規定されていることがわかりました。また、地方公共団体の会計年度についても、地方自治法第208条第1項に「普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする」と書かれています。

つまり、国や地方公共団体の会計年度については、法律でその会計年度が「4月1日から翌年3月31日まで」と規定されているのです。法律で決まっているので、各自治体が自由に会計年度を設定することはできないしくみになっていました。

日本では大昔から3月期決算だったらしい

いろいろな文献を調べてみると、日本では7世紀頃に律令国家が成立した時代から、国の会計を1年間という単位で区切ることが行われていたようです。小学校で習った「中大兄皇子と中臣鎌足らの大化の改新」の時代ですね。諸説あるようですが、だいたいこの時代から旧暦の1月から12月までが会計年度になっていたようです。その後、明治時代になってから会計年度が制度化され、いまの4月~3月という期間が定着しました。

でも、諸外国ではキリよく1月~12月を会計年度としている企業が多く、日本でもグローバルに活動する企業やスタートアップなどの新しい組織では、国際標準に合わせて12月や9月を決算期にするところが増えているようです。

建設業はやっぱり年度末が忙しい

さて、昔話から現代に話を戻します。前述のようにわが国の会計年度が3月期決算となっているため、公共工事の多くも3月末で区切りをつけることになります。建設業、特に土木工事は国や地方公共団体が発注元である場合が多いため、必然的に年度末、つまり年が明けてからの1月~3月に仕事が集中し、年度末が忙しくなるという状況となります。

これは公共工事だけではなく、国や地方公共団体などの公的機関が関わるさまざまな案件でも同様です。例えば、建設DXやBIMといった新しい取り組みに関しても、年度末でいったん区切りをつけるということになります。今回は、国土交通省の建築BIM推進会議について、2023年度の取り組み状況をおさらいしておきたいと思います。

建築BIM推進会議ってなんだっけ

建築BIM推進会議は、2019年6月に国土交通省によって設置された会議体です。大学の先生など学識経験者や建築関係団体の役員など、31人ほど(2023年12月時点)の委員から構成されていて、これに事務局として国土交通省の職員が参加して運営されています。

官民が一体となってBIMの活用を推進するために設置されたこの会議では、各分野で進んでいる建設DXの取り組み状況の共有や、BIMを活用した民間のさまざまな取り組み事例の紹介、そして建築BIMがもたらす将来像などを議論しています。

建築BIMの将来像ってなに?

BIMの将来像と、それを実現するための工程表を示すものとして、建築BIM推進会議では2021年度に「建築BIMの将来像と工程表」を策定し、公表しました。

「建築分野におけるBIM活用促進」
国土交通省住宅局大臣官房官庁営繕部資料より抜粋

出典:首相官邸ホームページ

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/sankankyougikai2019/infrastructure/dai3/siryou4.pdf

2023年度は、この内容をさらに発展させた「増補版」を策定しています。この増補版では、建設業の将来像に向けた官民の役割分担の明確化やその工程表(ロードマップ)を議論し、今年度末(2024年3月)の公表に向けて準備を進めているところです。2023年12月の中間報告では、13の関連団体等からさまざまな報告がなされました。

この時、国土交通省からは、あらたに「建築BIMの将来像と工程表:社会課題への対応と目指す将来像」などの資料が示され、建設DXやBIMが新たなフェーズである「BIM-Level2(BIMs)」に入ったことが説明されました。

国土交通省建築BIM推進会議
「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」資料より抜粋

出典:建築BIM推進会議ホームページ

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001603587.pdf

建築BIM推進会議の詳細情報は、国土交通省の建築BIM推進会議ホームページをご覧ください。

建築BIM推進会議っていつまで活動するの?

建築BIM推進会議は、2024年度で発足から6年目になりますが、まだまだ道半ばといった感じです。建築BIM推進会議は、この先もしばらくは活動を続けていくでしょう。さきほどのロードマップを見ると、むしろこれからが本番といった感じすらあります。発足から今日までの5年間は、BIMの啓蒙や普及に力を入れ、BIMを使うメリットや、逆にBIMを使わないデメリットといった基礎的な情報を発信してきましたが、いよいよこれからがBIMを本格的に使う段階であるとみるべきでしょう。公表された細かく期限を区切ったロードマップをみると、国土交通省の本気度が見えてきます。

これまでBIMの導入はもう少し先でいいかなとか、まだウチにはBIMは早いよと言っていた方も、そろそろ建設DXに取り組む時期かもしれません。スタートダッシュについていけないと、進展の早いデジタル社会では、あっという間に周回遅れになってしまう危険があります。

なにから始めればいいの?

では、なにから始めればよいのか、戸惑いますよね?そんな時は、まずは身近にいる“ちょっと詳しい人”に聞いてみることから始めると良いと思います。取引先の若手社員とか、皆さまの組織が所属する業界団体の“わりと詳しい人”とか。

まわりにそんな人はいないよという方は、ぜひ協栄産業に気軽にお声がけください。

協栄産業には、建築BIM推進会議の”中の人”もいます。また、2023年12月に東京で開催された建設DX展で、協栄産業ブースに突如として現れ、その後行方をくらましている”ハカセ”も、じつは建築BIM推進会議の委員の一人です。皆さまからのお問い合わせを聞きつけて、また突如として現れるかもしれませんので、こちらもぜひご協力をお願いいたします。

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