

コラム
第22回
「BIMとCDEとAIのミライ」
ラプラス・プロジェクトの成功
前回のコラムでは、BIM(Building Information Modeling)が、未来を予見する悪魔のツールとして活用され、大規模プロジェクトを成功させるという、フィクションを掲載しました。

現在の物理法則でラプラスの悪魔を実現するのは、ほぼ不可能に近いと思われます。しかし、ラプラス・プロジェクトを成功させた若き建築家“キョウエイ・ミライ”は、大手建設会社で培った経験と、このプロジェクトを成功に導いたBIMの専門知識を活かし、中小建設会社へのBIM導入支援に力を注ぐことを決意します。ミライは、建設業の9割以上を占める中小建設会社こそが、日本の建設業界の未来を担うカギであると考えているのです。
中小建設会社のBIM活用術
ミライは、中小建設会社向けのBIM導入支援プログラムを立ち上げ、BIM導入支援セミナーを開催して、熱弁を振るっています。
「BIMは、単なる設計ツールではありません。建設プロジェクト全体のマネジメントを効率化し、利益を最大化する強力な武器となるのです。」

ミライはその一例として、BIMと建築積算ソフトを連携させることで、中小建設会社でも高度なコストマネジメントが可能になることを説明します。
「従来の積算方法は、手作業が多く時間も手間もかかり、精度を高めることも難しかった。しかし、例えばBIMと積算ソフトを連携させれば、設計図から自動的に数量を抽出することもでき、迅速かつ精度の高い積算が可能になります。また、BIMデータを使って各種シミュレーションを行うことで、施工中や維持管理段階での問題点を事前に予測し、プロジェクト全体のコスト削減につなげることもできるのです。」
BIMの導入にはコストがかかる
しかし、セミナーに参加した中小建設会社の社長は、ミライの言葉を遮るように発言します。
「建設プロジェクトにコストマネジメントが重要なことは、アンタに言われなくたってわかっているよ。でも、BIMの導入にはコストがかかるだろ。ウチのような中小企業にとって、BIMを導入するのはハードルも高いし、それ以上にリスクも高いんだよ。」

これに対し、ミライは、次のように答えました。
「確かに、BIMの導入には初期費用がかかります。しかし、長期的に見れば、コスト削減や利益向上によって、十分に回収することができると考えます。また、近年では、クラウド型のBIMツールやサブスク形式の積算ソフトの登場により、初期費用を抑えながらBIMを導入することも可能になっています。」
さらに、ミライはBIMを使って、建設ライフサイクル(設計・施工・維持管理)で一貫したデータマネジメントが可能になるという説明を続けます。
「従来の建設プロジェクトでは、各工程で別々のデータが作成され使われていました。設計BIMや施工BIMといわれるものがそれです。しかし、BIMを建設ライフサイクル全体で使えば、企画・設計段階から施工、維持管理段階まで、一貫したデータベースで建物を管理することができるのです。このデータベースをCDE(Common Data Environment)と呼びます。このCDEにより、情報共有の効率化や意思決定の迅速化を実現することができ、プロジェクト全体の効率化と建物の品質向上が、両方とも実現できるのです。」
一貫したBIMデータベース(CDE)と
AI(人工知能)
ミライは、BIMに集積される建物のデータをAIが分析し、建物や街の諸問題を予見することができれば、小回りの利く中小建設会社ならではの強みが発揮されるというストーリーを展開し、建設業界の将来像を話し始めます。
「CDEには、設計図や施工図、積算データ、建物や設備機器のメンテナンス履歴など、建設プロジェクトに関わるあらゆる情報が蓄積されています。AIはその膨大なデータを分析することで、将来の需要予測や、最適な施工方法、潜在的なリスクなどを予測することができます。中小建設会社は、これらの情報を活用することで、競争力を高め、新たなビジネスチャンスを創出することができるのです。」

しかし、先ほどの社長は、次のように質問します。
「AIによる未来予見は確かに魅力的だが、我々中小企業にとって、AIを導入するのは簡単ではないし、そもそも導入したところで使いこなせる人材もいないよ。」
ミライは、次のように答えました。
「おっしゃる通り、AIの導入には技術的なハードルがあります。しかし、近年では、AIクラウドサービスの登場により、専門知識がなくても比較的簡単にAIを導入することができるようになりました。中小企業でも気軽にAIを導入できる環境が整うのも、もう時間の問題だと思います。」
さらにミライは、BIMとAIを活用することで、中小建設会社が独自の強みを発揮できるようになると言い、話を続けます。
「例えば、BIMを使ってバイオクライマティックデザインという、地域の気候特性に合わせた建物の設計や、地産地消の建材を使った施工方法を開発することが容易にできるようになります。また、AIを使って、顧客ニーズに合わせたユニークな住宅や店舗を提案することもできます。中小企業は、こうした強みを生かして、小回りの利く独自のサービスを提供し、大手企業との差別化を図ることができるのです。」
これを聞いて、例の社長は次のように言いました。
「なるほど、アンタの言うことにも一理あるな。BIMやAIは、まさに建設業界の未来かもしれない。私もBIMやAIを、若手社員と一緒に挑戦してみるよ。」
やはり、BIMは悪魔のツールなのか
ミライは、中小建設会社へのBIM導入支援を通じて、日本の建設業界の未来を変えていく決意を新たにします。そして、例の社長の顔を思い浮かべながら次のように考えました。
「BIMやCDE、そしてAIは、中小建設会社にとって、無限の可能性を秘めた、まさにラプラスの悪魔なのかもしれない。BIMを利用しAIを活用すれば、中小建設会社は、大手建設会社と対等に競争することもできる。さらには、世界中の人々を幸せにするような、革新的な建設プロジェクトを実現することだってできるかもしれない。私は、中小建設会社がAIとCDEを活用して成功するお手伝いをしていきたい。」

キョウエイ・ミライの夢は、実現に向けて着実に進んでいきそうです。
そしてその未来は、私たちの手で創っていくことができるのです。この新たな挑戦は、はたして中小建設会社の経営にどのような変化をもたらすのでしょうか…
※この物語はフィクションです。実際のBIMやAIの導入には、個別の事情や課題があります。ぜひ、当社にお問い合わせください。