コラム
第48回
【シリーズ】
古代文明に学ぶ課題解決 -3-
「4500年前の
パーフェクト・シティ
『モヘンジョダロ』の
超絶インフラと維持管理DX」
【古代文明に学ぶ課題解決】その2
大反響をいただいております新連載【古代文明に学ぶ課題解決】。
前回の「バベルの塔」に続き、第2回となる今回は、紀元前2500年頃のインダス文明へとタイムスリップしてみましょう。
今回のテーマは、現在のパキスタンに実在した謎多き古代都市「モヘンジョダロ」です。
社会人の皆様だけでなく、大学や高校で建築や土木を学ぶ学生さんたちにもぜひ知ってほしいのですが、この都市、実は現代の私たちが目指す「建設DX」や「維持管理」のヒントが山のように詰まった、まさに4500年前のパーフェクト・シティなのです。
オーパーツ級!? 完璧に計算されたインフラ都市
モヘンジョダロの遺跡を発掘した考古学者たちは、その光景に息を呑みました。
遺跡には、王の権力を誇示するような巨大な神殿や宮殿がない代わりに、そこには市民のための「極めて機能的で完璧なインフラ」が広がっていたからです。
街は東西南北に真っ直ぐ伸びる大通りで碁盤の目のように整備され、各家庭にはなんと水洗トイレと専用の水道(井戸)が完備されていました。生活排水は、密閉された地下下水道を通って街の外へ排出される仕組みまで完備されていたと言います。
ロンドンやパリでさえ、近代まで下水が道端に溢れていたことを考えると、4500年前にこれほどの公衆衛生とインフラ網を構築していたことは、もはやオーパーツ(時代錯誤の遺物)と言っても過言ではありません。
しかし、さらに驚くべきは、街づくりに使われた「焼レンガ」です。なんと、モヘンジョダロのレンガは、すべて「厚さ:幅:長さ = 1:2:4」という規格サイズで完全に統一されていました。
これ、現代のプレファブ工法や、私たち協栄産業が推進する「BIM(規格化されたパーツデータを組み上げていく仕組み)」の根底に流れる合理的な思想そのものですよね。古代の人々は、規格の統一がいかに建設の生産性を高めるかを完全に理解していたのです。
完璧な都市は、なぜゴーストタウンになったのか?
しかし、これほどまでに完成された都市でありながら、モヘンジョダロは紀元前1800年頃を境に急速に衰退し、やがて放棄されてしまいます。
衰退の理由は諸説ありますが、有力なのは「インダス川の流路変更や洪水」と、長年の灌漑農業による「塩害」といった自然環境の激変です。環境の変化によって文明が衰退してしまうのは、第4回のコラムで学んだ「イースター島の悲劇」と同じです。
しかし、モヘンジョダロにはイースター島にはない別の理由もありました。それが、「インフラの維持管理(メンテナンス)の限界」です。
自然環境が変わり、資材や人手が不足する中で、街中に張り巡らされた巨大な下水道やレンガの建物を「維持・更新」し続けることができなくなってしまったのです。どんなに素晴らしいインフラを作っても、自然環境と調和し、適切にメンテナンスを続けられなければ、都市は死んでしまう。モヘンジョダロの遺跡は、私たちにそのシビアな現実を突きつけています。
現代日本に忍び寄る「モヘンジョダロ化」の危機
さて、ここで現代の日本に目を向けてみましょう。
高度経済成長期に一斉に作られた橋梁、トンネル、上下水道網……。これら膨大な社会インフラが今、一斉に寿命を迎えようとしており、2030年頃には維持管理・更新のピークが訪れます。
このまま人手不足やコスト高騰を放置すれば、日本の都市インフラもメンテナンスの限界を迎え、現代のモヘンジョダロになりかねません。さらに、壊れてから作り直す「事後保全」は、莫大なコストだけでなく、大量の廃棄物とCO₂を排出するため、現代の必須課題であるGX(環境配慮)にも逆行してしまいます。
「予防保全 × DX」で、サステナブルなインフラを
この危機を乗り越え、都市を長く生かすためのカギとなるのが、第45回のコラムで取り上げた「予防保全 × DX」の概念です。
モヘンジョダロの人々が「規格化されたレンガ」で都市を築いたように、現代の私たちは「BIM×CDEという規格化されたデータ基盤」で建物の健康状態を管理する時代にいます。
協栄産業のアライアンスパートナーであるFMシステム社の「FM-Integration」を使えば、BIMモデルと施設管理データを統合し、「どこを、いつ直すべきか」を視覚的に把握できます。
さらに、当社の「IntegratorX」でデータをシームレスに連携させ、積算システム「FKS」で精緻な修繕コストを素早く弾き出す。これら最新のデジタルツールを掛け合わせることで、最小限のコストと環境負荷でインフラを延命させる「サステナブルな維持管理」が実現するのです。
協栄産業の建設事業部と共に、未来へ残る都市づくりを
古代の人々が成し遂げた偉大な建設の歴史を、現代のデータ技術で未来へつなぐ。私たち協栄産業の新生「建設事業部」は、まさにそのために発足しました。
建物を「作って終わり」にせず、設計・施工から維持管理まで、ライフサイクル全体をデータでサポートしていく。それが私たちの使命です。BIM連携やインフラの維持管理DXでお悩みの際は、ぜひお気軽に協栄産業にご相談ください!
次回(第49回)は、皆様お待ちかね! エジプトの「砂漠の巨大ピラミッド」に迫ります。王の墓か? それとも世界最古の公共事業か?数万人の労働者と数百万個の石材を束ねた、究極の「プロジェクト管理」と「古代の積算術」の謎を紐解きます。次回もどうぞお楽しみに!